· 社説 (Editorial) · N1 · 901字

AI時代の読書 非効率な出会いの意味

Reading in the AI Age: The Meaning of Inefficient Encounters

図書(としょ)館(かん)や書店(しょてん)で読書(どくしょ)週間(しゅうかん)に合(あ)わせたイベントが行(おこな)われている。読書(どくしょ)週間(しゅうかん)の源流(げんりゅう)は関東(かんとう)大(だい)震災(しんさい)後(ご)に始(はじ)まった読書(どくしょ)運動(うんどう)とされる。戦時(せんじ)中(ちゅう)に廃止(はいし)され、出版(しゅっぱん)が息(いき)を吹(ふ)き返(かえ)した1947年(ねん)に読書(どくしょ)週間(しゅうかん)として再(ふたた)び始(はじ)まり、80回(かい)を迎(むか)えた。

しかし今(いま)、出版(しゅっぱん)流通(りゅうつう)は苦境(くきょう)にある。紙(かみ)やインクの値上(ねあ)げが出版(しゅっぱん)社(しゃ)に重(おも)くのしかかる。輸送(ゆそう)費(ひ)も値上(ねあ)がりし、出版(しゅっぱん)社(しゃ)から書店(しょてん)に本(ほん)を卸(おろ)す出版(しゅっぱん)取次(とりつぎ)大手(おおて)のトップも取次(とりつぎ)事業(じぎょう)存続(そんぞく)への危機(きき)感(かん)を表明(ひょうめい)した。日本(にっぽん)出版(しゅっぱん)インフラセンターによると書店(しょてん)数(すう)は1万(まん)店(てん)を割(わ)った。

根本(こんぽん)原因(げんいん)は、読書(どくしょ)する人(ひと)の減少(げんしょう)だ。古書(こしょ)店(てん)が舞台(ぶたい)の漫画(まんが)「本(ほん)なら売(う)るほど」のヒットからは、特別(とくべつ)な本(ほん)との出会(であ)い、本(ほん)を介(かい)して人(ひと)とのつながりを深(ふか)めることに、共感(きょうかん)する人(ひと)は少(すく)なくないことがうかがえる。ただ文化(ぶんか)庁(ちょう)の2024年(ねん)の世論(よろん)調査(ちょうさ)では1カ月(げつ)に漫画(まんが)・雑誌(ざっし)以外(いがい)の本(ほん)を1冊(さつ)も読(よ)まない人(ひと)が約(やく)63%だった。

AI(人工(じんこう)知能(ちのう))時代(じだい)ならではの読書(どくしょ)の意義(いぎ)とは何(なに)か。デジタル空間(くうかん)では、関心(かんしん)のある情報(じょうほう)が次々(つぎつぎ)表示(ひょうじ)され、対話(たいわ)型(がた)生成(せいせい)AIは疑問(ぎもん)への「答(こた)え」を冗舌(じょうぜつ)に返(かえ)す。そんな時代(じだい)に、自分(じぶん)で本(ほん)を選(えら)び入手(にゅうしゅ)し、集中(しゅうちゅう)して読(よ)む行為(こうい)は、今(いま)となっては貴重(きちょう)な、情報(じょうほう)を自律(じりつ)的(てき)に得(え)る時間(じかん)となる。

特(とく)に書店(しょてん)で紙(かみ)の本(ほん)を買(か)う経験(けいけん)はそうだ。店(みせ)まで行(い)き、各店(かくてん)の広(ひろ)さに応(おう)じた品(しな)ぞろえの棚(たな)の間(あいだ)に身(み)を置(お)く。目(め)に飛(と)び込(こ)んできた背表紙(せびょうし)や書店(しょてん)員(いん)の手書(てが)きのポップに、関心(かんしん)を思(おも)いがけず広(ひろ)げられる。「非(ひ)効率(こうりつ)」だが、時(とき)に当初(とうしょ)の目的(もくてき)地(ち)よりずっと遠(とお)くに導(みちび)かれる。

一方(いっぽう)、障害(しょうがい)や居住(きょじゅう)地(ち)、忙(いそが)しさなど、様々(さまざま)な理由(りゆう)で読書(どくしょ)や書店(しょてん)通(かよ)いをしにくい場合(ばあい)も多(おお)い。音声(おんせい)で聞(き)ける電子(でんし)書籍(しょせき)やネット書店(しょてん)など読書(どくしょ)の機会(きかい)は徐々(じょじょ)に開(ひら)かれてきたが、今後(こんご)も選択(せんたく)肢(し)が広(ひろ)がってほしい。AIの活用(かつよう)も有効(ゆうこう)だろう。

少子(しょうし)化(か)でも児童(じどう)書(しょ)は比較(ひかく)的(てき)堅調(けんちょう)だ。ただ全国(ぜんこく)学校(がっこう)図書(としょ)館(かん)協議(きょうぎ)会(かい)の学校(がっこう)読書(どくしょ)調査(ちょうさ)では、小学(しょうがく)4~6年(ねん)生(せい)が今年(ことし)5月(がつ)に読(よ)んだ本(ほん)は平均(へいきん)10・7冊(さつ)だが中学(ちゅうがく)、高校(こうこう)と進(すす)むにつれ減(へ)る。SNSやゲーム以外(いがい)の過(す)ごし方(かた)として、読書(どくしょ)や図書(としょ)館(かん)、書店(しょてん)の魅力(みりょく)を伝(つた)えたい。

それらが持続(じぞく)可能(かのう)であるために、紙(かみ)の本(ほん)の流通(りゅうつう)の非(ひ)効率(こうりつ)は改善(かいぜん)が必要(ひつよう)だ。取次(とりつぎ)が見繕(みつくろ)った本(ほん)を書店(しょてん)に送(おく)る、書店(しょてん)は原則(げんそく)値引(ねび)きできず、返品(へんぴん)可能(かのう)だが取(と)り分(ぶん)が少(すく)ないといった従来(じゅうらい)の慣行(かんこう)は、改善(かいぜん)や再(さい)検討(けんとう)が進(すす)んでいるがまだ途上(とじょう)だ。昨年(さくねん)成立(せいりつ)のトラック適正(てきせい)化(か)二(に)法(ほう)に対応(たいおう)した輸送(ゆそう)費(ひ)高騰(こうとう)も懸念(けねん)される。全国(ぜんこく)津々(つつ)浦々(うらうら)に多様(たよう)な本(ほん)を届(とど)けられる従来(じゅうらい)の利点(りてん)はできるだけ残(のこ)しつつ、仕組(しく)みを再(さい)構築(こうちく)していきたい。

理解度チェック Comprehension check

  1. 筆者の主張として最も適当なものはどれか。

  2. 「特に書店で紙の本を買う経験はそうだ」の「そう」は何を指しているか。

  3. 筆者が書店での体験を「非効率」だと認めながらも評価しているのはなぜか。

  4. 本文の内容と合っているものはどれか。

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